投資記事

配当利回り10%超えエクソン・モービルについて

こんにちはくまさんです。今回は配当利回りが10%を超えたエクソン・モービルについて考えてみました。




高配当投資をする上では避けて通れない不人気銘柄ですから知識として知っていてもいいと思います。

エクソン・モービルの歴史は長い、石油の歴史は世界の歴史

エクソン・モービルは非常に長い歴史を持つ会社です。
そのもととなる会社の設立は1870年までさかのぼります。

アメリカの実業家ロックフェラーが立ち上げたスタンダード・オイル社がほぼ市場を独占するような形で石油産業は発展していきます。

しかしその独占が民衆の反感を買い1911年に反トラスト法という法律によりアメリカの連邦最高裁判所に解体命令を出されて分割されました。

そのうちの2社がエクソンとモービルという名前の会社の前身でその後両社は1999年に合併しエクソン・モービルと呼ばれる会社が誕生しました。

かんたんまとめ

    エクソン・モービルの前身はロックフェラーが創設したスタンダード・オイル社
    独占が強力すぎて反トラスト法によって解体された
    そのうちの2社が合併し現在のエクソン・モービルになる




エクソン・モービルの稼ぎの秘密

エクソン・モービルの稼ぎの秘密、それは独占の歴史と言っても過言ではありません。
エクソンとモービルはセブン・シスターズと呼ばれる石油を独占した7社に数えられますが現在ではエネルギーの世界を取り巻く産業構造も様変わりしています。

では過去と今の違いをかんたんにまとめてみたいと思います。

まず石油の採掘量や埋蔵量についてですがよく言われる石油が枯渇するという論調ですがこれは殆どの場合説明の条件を理解していない人が多いのではないでしょうか、石油はそうかんたんに枯渇しません。

1970年にオイルショックがありましたが、この原因は中東の戦争でOPECが原油の供給制限と輸出価格の大幅な引き上げを行ったからです。
この当時に石油は30年で資源が枯渇すると言われていました。2020年代現在石油が枯渇する気配は微塵もありません。採掘技術の向上や新しい資源の発掘などにより今後50年以上心配はないという試算もあります。

このことから石油の資源の埋蔵量は潤沢であり、石油がなくなるという話は産油国が石油価格をコントロールするための口実であった可能性も高いです。

ちなみにこのOPEC(石油輸出国機構)という機関ですがこれは中東の産油国が世界を支配するオイルメジャーに対抗するために作った機関です。
このOPECの台頭により石油の価格決定などの主導権を中東の諸国が握ることとなります。(主にサウジアラビアやイラン・イラク)

それとともに産油国であるアメリカやロシアもこのOPECとの鞘当で石油価格を調整しています。

ここでのポイント

    エクソン・モービルは独占企業として恩恵を受けて成長をしてきた。
    OPEC(石油輸出国機構)の台頭により独占体制は崩れる。
    現在の石油価格はOPECやアメリカ・ロシアがコントロール
    石油資源がすぐに枯渇する可能性は低い

エクソン・モービルの先行きは茨の道

さてそんなエクソン・モービルですが今後の成長は茨の道である可能性が高いです。

エクソン・モービルの不確定要素1(原油価格の推移)

エクソン・モービルの不確定要素として原油の価格の推移があげられます。
下記が1990年代からの長期の原油チャートです。

2008年代にピークをつけて金融危機以降下落基調を続けています。原油の価格は需要と供給、そして地政学的な要因や政治情勢などに大きく影響を受けます。2008年にリーマンショックにより急落し、その後2014年OPECの原産合意の不調とシェールオイルの台頭によって更に急落しています。更には2020年にコロナウイルスの流行を受けて移動の制限や消費の減速懸念から更に下落しています。

ここからわかることは現在石油の需要は少なくなっていることと供給量(産油量)は過剰になっていること、それによって原油価格の上昇は短・中期的に見通せないことが明らかです。この状況下で収益が下がっているエクソン・モービルには厳しい状況が今後続くことから株価は下落基調をつづけています。

エクソン・モービルの不確定要素2(減配の可能性)

エクソン・モービルの配当率が10%を超えている理由の一つは株価が下落しているからですが、今後の減配の可能性も考慮されている可能性が高いです。

現にエネルギー企業英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェル[RDS-B]やBP旧ブリティッシュ・ペトロリアム[BP]は減配を発表しています。

もし減配が発表されれば配当利回りは半分程度まで落ち込む可能性もあるので株価の浮上はより厳しい状況になることが考えられます。
そのことからもうしばらく注視する必要があるかもしれません。

エクソン・モービルの不確定要素3(自然エネルギーの普及と促進)

更にエクソン・モービルを巡る環境はESG投資のトレンドや各国の環境対応から厳しい可能性があります。
ESG投資と呼ばれる社会・環境・企業統治の観点から投資をする流れが世界的に起きており、そうした企業に資金がシフトする流れが顕著に出ています。
更に世界的に脱化石エネルギーの流れを推進している傾向があります。

昨今のAppleやTeslaなどの企業はCO2排出削減に取り組んでおり、この流れが追い風になっていますがエクソン・モービルなどの石油企業には大きく向かい風です。ちなみに下記は公益セクターですが自然エネルギー等を推進しているネクステラエナジーの株価になります。

エクソン・モービルの懸念事項

    石油の需要過多による原油価格の下落
    収益の悪化による減配の可能性
    世界的な自然エネルギーの普及と促進の流れ

エクソン・モービルの浮上の可能性

では今後エクソン・モービルを買えないのかというとそうとも言えません。
石油企業は多くの場合景気循環を受けやすい企業と言われています。ですから今はちょうど底を打っているという考え方もできなくはありません。

直近の株価チャートではちょうど先日下落から上昇に転じる場面がありました。

これは長期チャートで見たときに1997年から2002年の株価水準に並んでいるのでここから短期的に反発する可能性もあります。しかし米大統領選の行方次第では更に下を掘っていく可能性も高いです。

またコロナショックの影響から今後回復していく事があれば人々の移動の自粛なども解除され航空需要などが戻ってきますから株価は上昇に転じる可能性もあります。

しかし地政学のリスクから中東情勢やスプラトリー諸島の周辺のインド太平洋地域の情勢次第では原油価格は大きく変動すると思われます。

ですからそちらの変動による影響を受ける可能性も高いです。

そして米国にあるシェール企業の再編や石油企業のさらなる統廃合も加速していくことが考えられますので石油企業を取り巻く環境は混迷を極めると考えられます。

しかし短期では石油の需要が消滅することはないことから、配当に重きをおいていて長期的には持続性があると考える人は購入対象になるでしょうし投資妙味があるかもしれません。

まとめ

    エクソン・モービルは独占企業として成長してきた。
    OPECの台頭で石油の独占が崩壊する。
    原油価格の低迷が収益を悪化させている。
    自然エネルギーの世界的な推進が向かい風になっている。
    景気が回復すれば少しの回復は見込める
    地政学のリスクなど不確定要素が多い

くまさんはエクソン・モービルを取り巻く原油を巡る国際的な紛争や情勢を考えると投資初心者が気軽に買える株ではないと思いますし、自分で買いたいとは思いません。

もし購入するなら同セクターの石油大手シェブロンや天然ガス企業であるノースウェスト・ナチュラル・ガス、そして公益セクターのネクステラエナジーやデュークエナジーなども比較対象としたいところです。

しかし逆張りである高配当投資やバリュー投資の戦略で組入比率を考えてポートフォリオの何%かで運用したりするのにはいいのではないかと考えます。

以上を考慮の上で投資をしていただければと思います。
それではみなさんの投資の参考になれば幸いです。
Happy investment!